DIARY

パラダイス銀河

#032

僕が狂わないのは、狂ってしまえないのは、夜寝て朝起きるから。今日と昨日が繋がっていないから。狂った夜のぼくは次の日また繰り返すまで、始まらない。リズムに飼いならされた僕の狂気は、幻想のまま終わる。全てのしがらみと嘘っぱちを引き剥がして、残酷なまでの自由、通りで男を殺して、街で女を犯している。僕の現在とはすなわち今日のことで、朝起きてから寝るまでで、そこに過去と未来はない。今より5分前も現在で、5分後も現在だ。起きる前は過去で、寝た後は未来。

 

素朴な存在はたまに顔を出すぐらいで、生々しい景色に僕は住んでいない。

あらかじめ失われた自由はたまに顔を出すぐらいで、生々しい自由を僕は生きていない。

なぜ僕は全て投げ出せない。全てに正直なってしまえない。つまらない。

僕の自然な僕が、狂気を始める。今日始まる。今から現在の過去は現在、現在の未来は現在。僕はどこでも生きている。キャンバスにぶちまけた絵の具。紫の塊。

 

僕の存在はずっと昔から、大昔からはじまっているのに、僕は最近生まれ落ちた。あらかじめ失われた自由は子宮の中にもない。

人間などどうでもいい。社会はわからない。遠くから見て複雑なものなどなんの意味もなく、近くで見ればのっぺりとした物質が広がるだけ。僕はそれより小さい。

綺麗な姿がドロドロとなっている。ほとんど同じセリフを繰り返すバカが周りにはゴマンといる。僕は嘘ばかりついている。僕は本当のことを知らないから、嘘ばかりついている。嘘も正しくはない。

同じような音が周りに溢れて、見たくもない血色の悪い顔が相変わらずそこら中にあるのに、昨日の僕は今日の僕とほとんど変わらないのに、僕の狂気は昨日で終わって、今日始まって、終わって、明日始まる。

 

人間は同じことしかしない。人間は同じ言葉しか言わない。人間は笑って、怒って、悲しむ。

 

僕はまた今日から始めようとして、夜に狂って終わる。僕は死なない。僕の生活はいつまでも続いて、僕の狂気はいつか日常に染み渡る。僕は今日始める。今日始める。