DIARY

パラダイス銀河

#014

天気のいい日、木陰でタバコを吸う。

 

真っ白なコーヒーカップ。真っ黒なコーヒー。

背中が暖かくなってくる。風が影を揺らしている。

 

車を運転する。ブドウ畑がずっと続く。窓を開けて手を出しても大丈夫。ダイエットコーラの350mlが好きなのだけれど、昨日の残り。それのぬるいやつを飲む。まっずい。スピーカーからの早い音楽が信号を無視して抽象する。

 

 

部屋が散らかってきた。そらは怠惰を許しているのではなくただ僕を甘やかしているのだ。ラムの空き瓶。底に溜まった吸殻。ビタミン剤。百科事典。チャックの壊れたビニールのジャケット。

 

生活の輝きは、どういうことか、この不透明から来ている。

存在の理由が見当たらないこと。理解を許さないものごと。不可解。それこそがまさに生活を彩り、尊いものにする。わからなさこそが、そのエネルギーの発信源だった。アクセルを踏む感触も、暖かいカップを受けとる時少し触れる指先も。僕が死ぬことの確信から踊るように逆算されて初めてそれが浮かび上がる。そのシーン。積み重ねる生活の全ての瞬間。それぞれが意味をもつ。それぞれが僕を通して始まりと繋がる。僕の終わりを匂わせて、その物質は、それぞれはそこにあって、それは今この瞬間に、そして大きく広がる。

 

誰も知らない。僕たちが一体何なのか。静かにじっとしていると四肢の重みが家具に乗る。接着しているところから僕が始まっている。

全てを知っているように、これから何が起こるかその眼の奥で知るように僕たちは歩くし、話すし、動くし。

 

ずっと前の原因まではそう遠くない。空っぽなペットボトルの先で焦点を失う景色からでもそれは少しずつ見えてきたりする。

 

ものごと全ての混乱を抱えて景色に写す。驚きとおおきくて気持ちのいい波が始まる。生活はそれの折り重りなのだ。疑問が諦めに変わるとそれらは答えを嫌うだらしない視点になる。それは極彩色の分厚いフィルターへと変わり僕のレンズとなり、生活は色とりどりに輝き始める。意味が全部消え失せて、気持ちも擦り切れて、人間生活のお粗末なカラクリが無残に、その骨組みが晒される、それでも僕は楽しくなる、喉を通る冷たい水、大きく吸い込む空気、汗でぬれたTシャツ、動いて、全部わからなくなって、気持ちよくなる。全部捕まえようとして僕は全部取り損なう。

 

人が話すのを見る、書いているのを見る、動いているのを見る。僕たちはじっとしてられない。器官が理由を作り、1日を真っ当に浪費する。つまらないことを考えず働いたり、恋をしたり、酒を煽ったりするのが本当の楽しみ方なのだという。回り回って僕も賛成。大賛成!