DIARY

パラダイス銀河

#076

”人間理性の無力を口実にして、理性の問題をいわば回避するようなことをしなかった”

広義で表面的なもの。混乱。職業、生活、家の大きさ、土地、歴史、カーペットのブランド、香水の種類、あらゆるテクノロジーのメカニズム。電子レンジ、浮遊するLED、反応の集合、機械にとっての学習。「前進」する活動は創造ではなく組み合わせ。解釈、消費、発見。主体的な種としての行為は能動の見え方をするけれど、対象が対象と向き合う。種類の違う緊張感。そのコレクション。使い方。道具主義。それは言葉であり、ペーパーナイフであり、原子爆弾であり、マグカップにハンドルがついた理由でもある。あのリンゴはこのリンゴではなく、あのリンゴとこのリンゴもリンゴであるからこそ人生から意味はすっかり消えていき、消えたことも消えて、有意味である方が恐ろしくなる。あの意味はこの意味ではなく、この意味もあの意味ではない。しかしあの意味もこの意味も意味であり、意味は意味ではない。

 現代詩のマガジンをめくる。把握できないあれこれを、ゆるいニヒルを投げかけて物事をうやむやにしている。そんなことはない。僕がいやなやつなのだ。抽象的な表現、言葉のポップな使用。あるコミュニティの中での賞賛、それを仰ぐヒエラルキーの下層部。ただの社会でただの人間。詩人は見た目が良くないとたぶんだめだ。160センチの男のニヒリズムはただのひねくれで、形の良くない女の内省は独りよがりな慰めで。音を楽しんだり、コンテクストで大胆に踊ったり、誰かが呟いたなんとなく絶望の匂いがする言葉が、結論を避けることを許す。「どうしようもなさ」は、これまでどうしようもなかったと思われる経験から出た帰納であり、それらを物事が始まる前に設置することで、新しい観察、変化、組み合わせを同じ絶望の色にし、来るかもしれない失望に備える。しかし絶望はもうやってこない。未来はあり得ず、実際的で物理的な虚構。欲の形態。耐えきれなくなった理性はポップになったり、気狂いを起こす。新しい心理的な揺さぶりから逃げる。性欲、山頂、サンセット、コーヒー豆、誰かの日記。なんとなく暗くなるくらいなら気が触れたように笑う。同情が欲しいなら明るく振る舞えばいい。内省を暴露したところで、言葉のポップな使用を始めたところで、何もかもどうしようもないままで、醜い顔は醜いままで、欲しいものは手に入らず、部屋は狭いまま。いつも笑顔でユーモアのある語り口。人を明るくさせて、突然全ての人生から消える。欲深く、沈んでいきそうなほどありまった富。朝昼晩とセックスを繰り返す人。

平凡な自慰行為はテクノロジーによってあの手この手と見せ方を変えるけれども呪いは克服されず、人間は進まず、個人的な豊かさは遠のいて、理想の生活は幻想になって、何も始まらないまま全てが終わって、希望はすでに消費されている。眩しい可能性は景色の奥へと流れていった。住んでいる街、至近距離にいる別の肉体に引っ付いた綺麗な顔。先取りする満足。どこかで始まっている人生、理想の生活、すでに完結している不安。