DIARY

パラダイス銀河

憂鬱は軽やかに夜を乗り越えて、目を覚ますのをまつ。酩酊は人生の諸々の営みと同じように小細工でしかない。

抽象的に沈んでいく人間に具体的な軋轢が追加されると、重たいだけだった憂鬱は棘を持ち始める。抽象的な理由で人は死んだりしない。それらは弾丸で、トリガーは実際的な出来事だったのだろう。失恋、仕事、借金、なんでもいい。

死のイメージは真っ白な光り、生のイメージは淡い光り。目覚めて脳みそから聞こえてくる第一声が「拳銃があれば今すぐコメカミに銃口を当て引き金を引くだろうな」だなんて、なんたる人間か。外国にいた頃に済ませるべきだった。

ふと思い出す出来事がある。二限続く物理学の授業の休み時間、ちょうど素数の分布について話始めた教授が一旦切り上げた後の20分の休憩時間、僕は喫煙所にいた。後からクラスメイトが入ってきて、銃のことを聞いた。「グロックの19ならキャッシュで500ドルぐらいで買える。」とそいつは言った。学校から帰ると僕はそんなことはすっかり忘れて、夕日が綺麗だななんて思っていたのだろう。ラッキーはラッキーな人間にだけストライクする。運命を呪ったりはできない。それは自分が魔法使いじゃないことに絶望するようなものだ。

何か行動しなければ人生が動かないというのは自明なのだけれど、そんなことせずただ待っているだけでもいい。文字通り何をしてもいい人生で、何もしないという選択肢は許されている。痛いことは起こらない。若さと可能性をドブに捨てることをあらかじめ後悔しながら、それでも何もできないということは、僕としては論理的整合性は取れている。