DIARY

パラダイス銀河

#067

喫茶店でクリスマスセールのチラシを広げているおじさんがなんとなく目に入ってチラッと横目で見ると広告の裏側にアサルトライフルらしきものが聖夜に半額で売り出されることが書いてあって思わず吹き出しそうになった。シニカルな組み合わせもここまでくると純度の高いジョークだ。

昼過ぎ。ライターを貸してくれと言われる。マリファナを吸いながら涼しい顔で道を闊歩できるのはここぐらいじゃないか。ジャケットに匂いがついてしまった。夜ご飯を食べにいく予定の知人は嫌な顔をするかもしれない。ヘミングウェイの「移動祝祭日」ももうすぐ読み終わる。少し寂しい。愛嬌のある脚色であふれた老人の回顧録と言った感じだった。しかしそれら生活の結論がショットガンで自らの頭を打ち抜くことだったと考えるとなんともやりきれなくなる。未だ稚拙な文章しか書けない。目的地はさっぱりわからないのに遠回りをしていると感じるのはなぜだろうか。

死を具体的にイメージできないとき自殺をおもうと友人はいう。楽しい死に方について考えている。クリスマスに流れるジャズアレンジの音楽や、夜も眩しい装飾が溢れる街並のように、心が軽くなるような死。真っ白い光の中へ沈んでいくような死。

生まれた場所から最も離れたところで、自分のことを誰も知らない土地で異邦人として長く暮らすのはいい意味で生活感がない。よく知る現実からとにかく離れて、よく知る人親しい人からもずっと離れて離れて、遠い国で暮らす。何も知らない土地を移動し続けることをやめない。そうしているうちにいなくなってしまえればいい。腰を落ち着けて家庭を築いて幸せに暮らすことは寝る前にちょっと考える。そんな風にならないことはこの僕が一番よく知っている。