DIARY

パラダイス銀河

#066

ハードボイルドと呼ぶには甘すぎる形容詞が並んだ文章を眺めているうちに日が沈み始めた。湿った枯葉の上を歩く老人が履くコンバースが妙に目を引いた。誰もいないカフェには、迷いのない和音から始まったメロディーが流れている。時代も場所もわからないところから来た音楽が僕の個人的な景色に不規則なニュアンスを与えている。若い男女が入って来た。今日は風が強い

街には全てがある。昼間に見えていた半月を思い出して、視野イコール現実という実感を乗り越えて太陽系、銀河系、全宇宙という存在の広がりまで現実の把握が染み渡った時、つまり存在全体を現実と呼ぶとき、世界のわからないところや宇宙の外側はすっきりと抜け落ちていく。そこに不安はない。

雨がリズミカルに打ち付ける窓から通りを歩く人たちを眺めていると、生活に流れる文法の気配を感じたりする。こもった文章。個人的な論理体系に徹しようとする文面から突然堰を切ったようにこぼれだす感情。