DIARY

パラダイス銀河

#064

長い時間をかけて穴の形を正確に描き出したからと言って、それは穴を埋めることとはまったく関係がなかったのだ。緻密に解析して小さな凹凸も見逃さずその穴を捉えても、そこに穴があることは変わらず、それを埋められない自分は何も変わっていない。絶望の形をじっくりと具体的にすることは確かにこれまで僕を慰めてはいたけれど、絶望があることに変わりはなく、それを癒す術などないことに変わりはない。僕は同じところを、回数を重ねるごとに自分を傷つけるためのナイフを鋭く研いでいる。次はもっと正確に自分を痛めつけることができる。次はもっとはっきりと穴の大きさを、絶望の形を捉えることができる。しかし物事は何も変わっていないのだ。絶望の形をなぞって正確にとらえようとする過程の中でしか一致感を覚えることはできず、生活の圧を感じることはできず、不安を忘れることはできない。常に苦しんでいないとそれは僕が本当のこととは関わってないような気持ちになって、生きていることの、世界の、目の前に広がるなにものかを捉えられない自分を正確に描写している時だけが、不可能な自分を毎秒自らに思い知らせている時だけ、僕は安心している。

 

人を殴ったり痛めつけたりセックスをしたり耐えられないほどの空腹になったり飯を食ったり銃口を突きつけられたり頬骨をおったり、首に縄をかけられたり、砂漠で跪いたり、くらい街角で背中にナイフが刺さったりしないと、納得はやってこない。一致はこない。 

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