DIARY

パラダイス銀河

#060

裏通りに散らばった水たまりが景色の所々を切り取っている。自動販売機まで傘をささずに歩いたら思いの外濡れてしまった。ダイエットコーラを2本買う。パッケージのデザインがオリジナルよりちょっとだけかっこいい。コーラを死ぬほど飲んでも死なない。コーラを死ぬほど飲まなくても死ぬ。死んだらコーラが飲めない。

僕はまたわからない。もうすぐでこの街を出ることになった。何事にも終わりは来る。まだこの場所にいるのに過去の記憶が今の生活を追い越そうとして、街の景色が優しくなっていく。人と話していてがっかりするのは失礼なことなのだとは十分承知しているのだけれど、またがっかりしてしまった。早合点するのはよくないけれどこればかりは皮膚感覚なのでどうしようもない。他人を諦めた時点というのは誰にでもあるものなのだろうか。

読んだ本も読んでない本も全部処分した。文字どおり部屋が空っぽになった。僕も一緒に空っぽになれればどれだけいいか。昔みたいに辛くもなければ悲しくもないけれど、なんとなくみぞおちあたりから胸が圧迫されているような感じがする。息を深く吸いきれない。不安だろうか。僕の居場所はどこにもない。僕はもう異邦人でもない。音も痛みもなく一瞬で消え去れないのならばせめて快楽にまみれた人生を用意しておいてほしい。わがままなんかじゃない。