DIARY

パラダイス銀河

#058

自殺の森で生まれた老人。曇った目をしている。

コメント欄に、イタリアより愛を込めてと書いてあった。

 

自殺の名所なるところで未だに自殺する人がいるのは、やはり寂しさからではないか。生者の僕たちは不気味に思うけれど、自殺をこれからしようとする人にとっては同士と思えるのかもしれない。吸い寄せられる。死ぬ時も孤独を恐れる。

高いビルから飛び降りる。10階からとびおりたら、人が死んだというのがリアルに伝わる。しかし200階から飛び降りたら体は木っ端微塵になって、まさに消滅したように見える。そこには僕たちのイメージとは違う死がある。死体。動かない体を見るから、空っぽな肉体を見るから、そこに死を感じる。僕たちにとって死は、何かから何かが抜けて初めて捉えることができる。目の前の肉体から何かが消えた。その機能、生命、生。それらそのものを捉えることはできないけれど、そこにそれらがないこと。生の輪郭が、死の中にある。動かない体から、生の内容を想う。

 

木漏れ日が落ちている。鬱蒼とした木々が空を覆っている。冷たいのに暖かい。暖かいのに冷たい。好きな音楽の一番好きなフレーズを頭で繰り返している。