DIARY

パラダイス銀河

#055

マイアミに行った友達が悪魔にあったと言う。大丈夫何もかもうまくいくと繰り返し諭されたらしい。

軽快な足取りで坂を下りていく。雨が止んで、真っ赤な傘は差さずに済んだ。誕生日にいつも行くケーキ屋さんが開店の準備をしている。トランペットのメロディーラインが中から聞こえてくる。体が軽くなっていく。いい匂いのするこの坂道を降りる。

暗い洞窟のような部屋に住んでいた。点滅を繰り返す大小のディスプレイが部屋に散らばっている。床には新聞紙と埃をかぶった重たい本。タバコの吸殻、ダイエットコーラの空き缶、古い科学雑誌、安いコンドーム。机の上には化粧水とラップトップだけが置いてある。窓がない、とてもくらい。とてもくらい。ここで何も始まらないまま全てが過ぎ去って、何もかもが終わる。何も始まらないまま何もかもが終わっていく。何もかもが過ぎ去っていく音を聞きながらベットで横になっている。キラキラしたいい匂いの人生が遠いところで終わっていく。