DIARY

パラダイス銀河

#000 Jazz

 

ジャズ。

牛や豚や鳥が焼かれて煮られて揚げられたりしている。通りは米と野菜でごった返している。変わった匂いがする。喉がキュッと締まるような匂いがする。汗をかいた大男が何人も横を通り過ぎていく。暑い。ほとんどが男。視線がものすごい速さで流れては消える。狭い路地にでこぼこと乱立したネオンサインは天まで届く。JR三宮駅を降りる。高架下を西へ。飲食店が密集している。動物の死骸をこねくり回して異臭を放っている通りで、男の汗やらなんやらの匂いで鼻が曲がりそうになるその通りの角から空気を裂くように、トランペットが聞こえてくる。うなるようなソロが通りを駆け抜けている。人間が汗だくになりながら大きく口を開けて、そのびっしり詰まった歯で狂ったように動物の死骸を噛み砕いているその奥から、ジャズが聞こえてくる。汚れたスーツの男が一人で踊っている。みんなが泣いたり叫んだり、壊れるくらい大げさに笑ったりしている。緑のドア。250円。