DIARY

パラダイス銀河

#033

「ねえ、だから言ったでしょう。」

「いけると思ったんだよ今度こそは。」

「毎回言ってるでしょ、時間の無駄だって。」

「五階だとダメなのかな。」

「高さの問題じゃないのよ、あなたは三十階から落っこちても死んだりしないわ。三階以降は死に対して漸近するだけよ、それは決してあなたを死に至らせない。」

「なら僕はどうすればいいのさ。これだけ死にたくて頑張って生きているのに、これだと生きている意味がないじゃないか。」

「グダグダいうのはやめてよ、それを探すための人生でしょう?」

「こうまでして死ぬ必要があるのかなあ、生きる意味が分からなくなってきたよ。」

「子供みたいなこと今更言わないで。私たちもう二十二よ。フラフラしてもいい時期はとっくに過ぎてる。」

「言われなくてもわかってるさ。明日はガスを試してみるつもりだよ。最近読んだ小説にあったんだ。主人公の親友が冒頭で、車を密閉してエンジンを炊くんだよ。排気口に付けたホースを車内に繋げて一酸化炭素中毒を起こそうって魂胆さ。」

「最近の車って排気ガスまでクリーンなんじゃない?それだけ手の込んだやり方でうまくいかなったらそれこそ目も当てられないわよ。」

「分からないだろ、やってみないと。とにかく明日はそれでいくから。」

「そう。わかった。私は明日忙しくて一緒にいられないけど、まあ頑張ってね。もし早く終わったら連絡する。」