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DIARY

パラダイス銀河

#017

空のビール瓶を通って彼女の体まで、太陽の光が届いている。

明け方なのか、夕方なのか。青のカーテンが揺れている。

 

ずっと前にこぼした言葉が僕を通り抜けずに残っている。

「君は自分の中に溜まったものを切り売りしている。それはいつか底をつく。」

 

そんな時間はずっと流れていたと思う。何かが根拠を持って、何かがそこに積み重なっていった時間。たしかな感触を求めて生活をさまよう。筆圧の強さや、部屋に散らかる元の場所に戻らないあれこれは、いつかの僕を更新していたあれこれだった。

 

古いカウチにずっと横になっている。5時を過ぎていること知らせるディスプレイは黙ってこちらを向いている。この瞬間に理由を求めてしまうのはしかたがない。今現在はたしかにここにあって、それはどこかへ向かっていて、それなのにこの空間の広がりもいつか、静かに何処かへ行ってしまう。

 

目を閉じる。まぶたの内側にも外側にも世界は広がっている。この広がりに恋に落ちている僕たちが不安なのは、よく考えれば当たり前のことなのだ。必ずいつか失わなければないあらゆる出来事のリストには、自分自身の名前も刻まれている。

 

終わりの時は近いのに僕は笑ったり、飲んだり食べたり、大きな木を見て楽しくなったりしている。現在は、死の瞬間の対になっているようだ。ゆっくりと終点へ向かっている生という列車の中で僕たちは、ひたすらに視線を泳がせている。

 

死を含む僕の体が、僕の死を目の前の景色に写している。人生は本当に、つかの間なのだと思う。だから多分何もできない、何もしたくない。僕を囲むあれこれは、いつかは手放す僕の生活。何もないところを彷徨う時がいつかくるのならばその時僕はきっと、コーヒーカップの温かさや友人の表情、背中を焼くような夏の日差しも、全部思い出して恋しくなるのだ。

 

 

現在進行形で過ぎていくノスタルジアが、いつか手放すこの重さを少しだけ軽くしている。