DIARY

パラダイス銀河

いつだって片付いている部屋に帰ると、精液の匂いが残っていた。僕はとんでもないことをしているのではないかという気持ちになった。何かとんでもないものをもてあそんでいる。コースターの上に100円玉が4枚並んでいて、これだ。僕の人生はこれだ、このため…

知人と安いご飯を食べていると、なぜこんなにも退屈なのかという話になった。色々理由は出てきた。死が遠くてとても近いなどと思春期みたいな所に責任転嫁が走り始めた頃合いに「見た目がアレだからじゃない」という話になった。よく考えると地味である。長…

夜でも朝でもない時間に名前が付いていない理由を、僕は随分と昔に考えたことがあるような気がする。誰も起きていないからなのでは、とふと思った。すっかり大人になって、夜が生活になり朝は夢の中でぷかぷかと浮かんでいる。夏が始まったと誰かが言ってい…

映画を一つ見終わった。ベランダに出ると正午は真白く、空はいつも通り青い。柵にもたれると熱くて耐えられなかった。室外機に吸ってタバコを吸った。ただぼんやりと、青い空と、とても暑い空気とに包まれながらタバコを吸ったシーンが、僕のこれまでの人生…

営業終了後の遊園地。 雨音が誰かの足音に聞こえて振り返りながら帰る。 梅雨時期。タバコ。 板チョコ。白い光。雲を通る太陽。不快感。 停滞。午後。重さ。退屈

#088

坂道を挟んだ向かい側に大きな煉瓦造りの家がある。夕方になるとピアノの音が聞こえてくる。同じフレーズを繰り返しては、戻ったり、進んだりする音楽に、僕は耳をいつも澄まして聴いている。ソファに寝転んでタバコを吸っていると、音楽が、過ぎ去った風景…

#087

最後の日は雨だろうか、晴れだろうか。曇りかもしれない。朝か、昼か、夜か。一人なのか、誰かがいるのか。ここなのか、あそこなのか。 最後の景色は記憶のどこかに既にある気がしている。覚えているはずのない産婦人科の病室の天井の模様や、母親と、窓から…

#086

死んだ人間に人は優しい。死は当人以外の全員にとって重要だ。ある人を失った時点でそれが起点になり、まつわる記憶はすべて曖昧な色合いで点滅し始める。 重たいドアを開けた時は確か雨だった。いつの間にか雨は止み、コンビニに傘を忘れたことを忘れた僕は…

#085

古いスピーカーから流れている全然知らない曲。ロングヘアはいきた証だとか、元素が旅をしているとか、そんなことを歌っている。動画サイトの履歴をスクロールした。3年も前まで遡ったけれど、同じ数曲が繰り返されているだけだった。他人に期待をしすぎてい…

#084

窓の外から少しずつ沈んでいく一日が見える。明るい町に繰り出そうと思って、明るい町に繰り出したら何が起こるだろうかをベッドの上で考えて、夢の中で、陽に照らされた明るい通りを歩いて、今日はもう終わるところまで来ている。理想の日々は今日を通り過…

#083

晴れている。洗濯をした。ベランダから、スクールゾーンと書かれた坂が見える。朝は小学生、夜は大学生の笑い声が聞こてくる坂。タバコを吸って真上を見ても太陽が眩しくないのは昼を過ぎているからだ。午前中だとこの位置から見上げれば眩しい。坂を登る人…

#082

燃焼剤が吸わないままのタバコを短くしていくように、残された時間は手につけられることなく終わっていく。何もかもが正当な理由を持ってそこにあるように見える。ギターケース、観葉植物、コーヒー豆、空瓶。生活の意図は、ペーパーナイフにあらかじめ意味…

#081

死ぬまでのわからない時間を埋めるに値する作業とか生活とか、そんなものもう見つからない気がしている。死ぬのもなんか勿体無い。痛いのとかはすごく嫌だ。酒の席で初めてあった人たち。僕だけが生きていない。よく笑ったりする。話をずっと聞いているけれ…

#080

久しぶりに古本でも買いに行こうと思い街まで。天井高くまで積み重なっていた。シオランの思想の黄昏があった。タイトルだけ知っていた。シオランはずっと読んでいた。ある時点から、その主張がただくどいとしか思えなくなり読むのをやめた。しかし僕が彼の…

#079

恋をすると人は凡庸になると行った主人公。憲法改正。谷川俊太郎。 様々な字体。他人の自意識。中央線。知らない曲ばかりのレコードの棚。トマトジュースとウォッカ。タバコ。未成年。エスカレーター。渋谷。脚 日付が変わる頃まで空いている喫茶店は、私鉄…

#276

But don't we at least mean something quite definite when we look at a colour and name our colour impression? it is as if we detached the colour impression from the object like a membrane (This ought to arouse our suspicions)

#078

It's supposed to be significant change for them. Everything we do and will do in life may be far from our ideal as we dreamed in childhood. Those fake depression's structured and be interpreted as truth in the society which confuse a few r…

#077

全体の把握への強迫観念めいた要求が、ずっと昔からあったように思う。例えば大きな都市に住むことになればその袋小路の一つ一つ、裏通り、抜け道、大通りを埋め尽くすビル、通りを歩く人の傾向、それから都市計画の過去50年ほどの資料なんてものまで自分の…

渋谷駅

目が覚めて誰もいない。ボサノバアレンジの耳障りなJPOPが部屋に響いている。天井が妙に高い。起きたら誰もいない方がいいなと思いながら夢を見ていた気がする。なりっぱなしのブラウン管。毛布が湿っている。シャワーを浴びようとするけれど、無意味に広い…

新宿駅

地下鉄丸ノ内線。空洞が続いている。新宿駅で降りるのはいつも億劫で、満員電車で油の浮いた皮膚のでこぼこを見るのもデタラメな歩幅で溢れかえる駅構内も、どちらも嫌になる。意味もなくぶらぶらして、人混みに紛れて寂しさを紛らわそうとしてもうまくいか…

#076

”人間理性の無力を口実にして、理性の問題をいわば回避するようなことをしなかった” 広義で表面的なもの。混乱。職業、生活、家の大きさ、土地、歴史、カーペットのブランド、香水の種類、あらゆるテクノロジーのメカニズム。電子レンジ、浮遊するLED、反応…

#075

大きな交差点。信号待ちをする母親の体から乗り出した赤ん坊と目があった。妙な気分になって僕は目をそらした。タバコ。5を3にした。喫茶店でたまに見る女性。ウェリントンの黒縁メガネ。八重歯。 友達。ジャズボーカルをやっている若い男は今時珍しい。僕…

#074

夜に閉め忘れたカーテン。窓から差し込む光はぼんやりとしていて、朝はすでに終わっていた。もう少しで届きそうな携帯電話に手を伸ばしたけれど届かなくて、手前に積んである本の一番上をとってパラパラとめくった。馴染みのない固有名詞がそこには並び、と…

#000 岩波文庫

「岩波岩波岩波〜」そう叫びながら本屋で無限の広がりを見せるコミック・雑誌コーナーを走り抜けていった少女の残り香が僕のコートを翻した。軽い足取りが嘘のように、岩波文庫の棚を見上げた少女の顔は固まったように表情を失って、それから一冊を手に取ろ…

#073

下北沢のマクドナルド。仕事でたまに会うバンドマンがテーブル席に一人で座っていた。こんにちはと言うとハッとした表情でこちらを見て笑った。雰囲気でやりたくないのに雰囲気で音楽をやってしまうと言うようなことを1時間ぐらい繰り返し言っていた。言葉…

#072

芸術大学の学生が開く個展、それから若い芸術家、ベテラン芸術家のギャラリーなどをここ2週間ぐらいで回った。若い世代が作った作品は、世界の、とりわけ人間の活動に対してシニカルで批判的な表現をしているものが多い。インストレーションでは意味が散ら…

#071

動けないでいる。なぜだかわからない。誰かのせいではない。 街を一日中歩いても、例えば道でくたばっているホームレスを見ても、ボロボロの哲学書を開き直してもピクリともしない心を、僕は許している訳ではない。しかし以前まで瞼をひらけばたちまちやって…

#070

昔読んだ本の冒頭で、大切なことは二つだけだという一文があった。それはきれいな女の子相手の恋愛、それからある種の音楽だ。他のものは消えていい。なぜなら醜いからだという。 破壊に至る過程こそコインの表裏のように快楽に面している。それは些細な衝動…

#069

カタカナの多い話。 あいも変わらず喫茶店にいく。3ドルコーヒーといっぱいのおかわり無料。右斜め前に座った小太りの若者、おそらく20代半ばの男にニーハオと声をかけられる。僕は中国人じゃないし中国人に間違えられるのがとんでもなく嫌いだと言ってそれ…

#068

ヘッドフォン。音量をあげると、自分の体の音が聞こえなくなる。足が地面につく音、骨が軋む音、服がこすれる音。うるさい音と視点だけ。 書くことが本当に出てこない。でも寂しさを紛らわしたい。 夕方。午後4時以降から7時くらいまでの時間は街が一番綺麗…