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DIARY

パラダイス銀河

#018

一人の人間が死ぬ時、近い人間が死ぬ時、その人の表情やそこを覆う景色を 例えばその人がこぼした一字一句も全部、忘れないように書き留めたりする。僕はその人の痕跡を残そうとしている。 口角がだんだんと下がっていくのを見ている。目尻が細くなって、表…

#017

空のビール瓶を通って彼女の体まで、太陽の光が届いている。 明け方なのか、夕方なのか。青のカーテンが揺れている。 ずっと前にこぼした言葉が僕を通り抜けずに残っている。 「君は自分の中に溜まったものを切り売りしている。それはいつか底をつく。」 そ…

#016

いつの間にか考えることをやめる。やり尽くしたという感じではなくて、見失ったといったほうがいいし、初めから真っ当に考えられることなど無かったというべきかもしれない。とにかく、問いの螺旋から降りてしまった僕の世界には、ほとんど何も残っていない…

#015

晴れ。僕がいるところから雲は一つも見えない。 部屋の窓からは木漏れ日が落ちている 。 先のことばかりを考える。いつか訪れるはずの理想的な時間のために現在を耕しているという認識が僕を慰めたり、ゆるい幸せをちらつかせたりしている。お宝は今この現在…

#014

天気のいい日、木陰でタバコを吸う。 真っ白なコーヒーカップ。真っ黒なコーヒー。 背中が暖かくなってくる。風が影を揺らしている。 車を運転する。ブドウ畑がずっと続く。窓を開けて手を出しても大丈夫。ダイエットコーラの350mlが好きなのだけれど、昨…

#013

221Bという表札。僕はここに住んでいる。 例の名探偵が住んでいた部屋番号と同じなのだ。だからと言って何というわけではないけれど、一回生の時数学基礎で知り合ったイギリス人が部屋へ来た時にひどく喜んでいたので思い出した。ベイカーストリートには今や…

#012

ラッキーストライクを一箱もらった。 ラッキーにストライクするタイミングがこの先の未来に横たわっている、なんてことはない。現在を犠牲にしないことには能天気な希望的観測が最終的に僕を絞め殺すだろう。生活は難しい。 "The artist's job is not to suc…

#011

毎週土曜の午前中は、街の中心でファーマーズマーケットが開かれる。2週間ほど渋っていた雨雲がようやく動き出した。昼頃にはずいぶんと暖かくなってきたので上着を脱いだ。晴れると生活に色彩が戻るというか、彩度がぐんと高くなる感じがする。トマトが反…

#010

夢を見た。 弟の子供に懐かれる。僕はすごく眠たくて、なんども寝ようとするけどリビングが賑やかで眠れない。母親に「一緒に遊んであげなさいよ」と言われる。小さな子供がテレビにかじりついている。僕は「我が闘争」の下巻を読み聞かせている。ヒトラーの…

#009

日曜。四月。 やるべきことなんてないのに、そのはずなのに生活が僕を急かしている。秒針だとか空腹だとか、一日のシーン。僕は引っ張られたり追いかけたりしている。 しあわせが未来に保存されているわけでもないのに、時々それを削っているような気分にな…

#008

全部僕の勘違いかもしれない。 現代美術館。広い。静かだった。 芸術、他人の表現。つまらない風景画から存在を切り取れというのか、美しさ?ただ退屈なだけだった。どんな絵を見ても、写真を見ても、映像を見ても、音を聞いても、どれだけ奇抜な凹凸を目に…

#007

暖かい日。何回か上着を脱いだ。 6時過ぎに帰宅。キャンパスを歩いているとなんとなく夏っぽい匂いがした。まだ3月だぞ。 小さい頃は週末よく家族でどこかへ遊びに行って、晩御飯も外で食べて、帰りに温泉によったりしていた。帰り道、車の窓を開けると夜…

#006

のっぺりした一日。 あまり好きじゃない。違和感。生活がどこまでも続くような感じ。僕達はこの姿のまま永遠に生き続ける。日常は続いて、社会がそこにはあって、ゆるい倦怠感が流れ続ける。死が近付いたり遠のいたりする。近付いてくると、大事だったものは…

#005

水溜りがそこら中に。 昨日はたしかに雨が降っていた。景色のところどころが切り取られて地面に落ちている。 同じアパートに住む友人の引っ越しパーティがあった。4月から東海岸の大学院に行くらしい。同居人によると、1ヶ月前イエールから不合格通知を受…

#004

これは日記だ。だらだらとつまらないことを書いてしまうことがあっても多少は許されるはず。誠実になるための場所が欲しいなら自分だけのノートに綴ればいいのだけれど、僕にとってインターネットの公共性というのはある種のモチベーションになっているらし…

#003

余命宣告をされたとして、死刑執行を待っているとして、僕はこの生を再評価するだろうか。それは、事実ではなく、起こりうる未来として。これからの出来事に対しての現在。僕にとって目の前に横たわる現実は、未来への伏線にすぎないということ。今この瞬間…

#002

自分の才能。その最大公倍数を引き出せるような領域。そういう物理的なうごき。

#001

再開した。 色々と紙書いていてもなんだか整理できない。ので、繋がった文として留めたい。紙に文字を書く作業がまた億劫になってしまった。 生活を整えていくと、積み上がっていくような充実感が、薄い自己肯定と共にやってくる。たとえば、ルーティンを作…